鬼滅の刃連載終了記念:鬼滅関連の標章で解説する商標3条1項各号の拒絶理由

2020年5月、週刊少年ジャンプで大人気連載中のマンガ『鬼滅の刃』が連載終了しました。わたしも遅ればせながらアニメ放送終了後に、その存在を知り有料配信サイトやAbemaTVでの再放送を見たりコミックスを読む等してなんとかこのビッグウェーブに少し乗ることが出来ました。学校などに通ってるわけではないので、水の呼吸壱の型ナニナニとか、友人と言い合って遊ぶことはできないのですが、自分が子供だったらそんな遊びもやってたのかなぁと思う程、大人気ですよね。

連載終了を記念して、何かその人気にあやかった記事を書こうと考えて、商標登録の要件(3条)について書いてなかったなと思いだし、この条文関連で書こうと思いました。

マンガの中で主人公の竈門炭治郎(かまどたんじろう)くん達は、鬼を退治する組織「鬼殺隊」に所属しています。鬼殺隊は、読んで字の如く鬼を殺す隊ですね。これは、一種のサービスなのではないか、、と思えたので、もしこのサービスについてのネーミング等(標章)が決まってなかったらと考えて、登録NGの標章について紹介しようと思います。

題して「お館様から鬼退治のサービスに係る商標について商標登録依頼があったと仮定して例を挙げて説明する商標法3条1項各号の拒絶理由」です。物語の核となる「鬼」ですが、私は見たことないですし、襲われたこともありませんがココでは『鬼は存在するものと仮定』します。現行の類似商品役務審査基準サービスから鬼殺隊のサービスに一番近いものは、45類「警護」っぽいので、願書(商標登録願)に記載する指定役務には45類とし、指定役務は「鬼の駆除」と考えてこのサービスの場合の登録NG商標ついて考えようと思います。

ちなみに44類に「有害動物の駆除(農業・水産養殖業・園芸・林業に関するもの)」というのがありますが、鬼の駆除は44類に該当しないでしょう。ホントに出願したら6条の拒絶理由(指定商品・指定役務が明確でない)が出されるでしょうが、あまり深く考えないようにします。

ざっくり3条の言わんとするところを説明すると、、、、登録商標はそのサービス(商品)についてあるネーミング等を付けた場合に、そのサービスについて自分だけが使うことができる権利です。逆に言うと、独占させる事にふさわしくないネーミング等は登録NGとなりますので、そういった標章について言及しています(注:条文番号は”第”とつけるのが正しいのですが、ちょっと長たらしい感じになってしまうので、”第”は抜いて書います)。

その商品又はその役務の普通名称は登録NG(3条1項1号)

よく例に挙げれるのは商品「りんご」に「りんご」という商標は登録できません(逆に「携帯」に「アップル」は登録され得る)。役務(サービス)で考えると「警護」に「警護」や「ボディガード」という商標は登録NGです。この例で考えると「鬼の駆除」の普通名称は、、、見ないモノを追い払う「エクソシスト」とかその日本語である「祓魔師」等のネーミングで出願するとこの条文で拒絶されそうです。初めから少し例えが分かりにくいですか?

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慣用商標は登録NG(3条1項2号)

よく例にあげられるのが「宿泊施設の提供」に「観光ホテル」という商標は登録できません、というものです。この例で考えるとサービス「鬼の駆除」に商標「鬼退治」はダメでしょう。物語の中には同業者の存在は書かれてませんが、日本を舞台にしていますので桃太郎のお話しはみんな知ってるでしょうし、「鬼退治」は独占させてはいけないと特許庁は考えるのではないでしょうか。

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質その他の特徴等の表示は登録NG(3条1項3号)

3条の拒絶理由の中では頻出、よくこの条文関連でOA(オフィスアクション=拒絶理由通知)が発せられています。例にあげられるのが、「よくきく」「スーパー」「一番」等、役務「飲食物の提供」に対して商標「実演」と言ったように品質やサービスの質のみのワードがこれにあたります。これは、過去実際に出願されて拒絶されたこともあるようですが「PMC」とか、やっぱり登録されないでしょう。Private Militaly Company=民間軍事会社、鬼殺隊は、お館様である産屋敷(うぶやしき)さんのプライベートな軍事組織って言ってもおかしくないので。ちょっと強引ですか?スイマセン。実際に登録NGとされた「PMC」出願では13類の「ライフル用・ハンドガン用及びショットガン用の装填済みカートリッジ並びにカートリッジケース及び弾丸からなる再装填用構成部品」という、いかにもミリタリー系な商品を指定して出願されていました。

大正時代にPMCの概念はないと思うが、、

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ありふれた氏又は名称は登録NG(3条1項4号)

鈴木とか佐藤は言うまでもなく、たくさんの人に共通な姓名等は、どんな商品・サービスにも独占させるわけにはいきません。お館様の苗字である産屋敷は登録されるだろうと思いますが、鬼滅のキャラの氏は主人公や柱を含め、珍しいものが多いのでこの条文にバッチリ該当しそうな姓は、、、あ、いました彼です、「村田」さんです。個人的には好きなんですよ、村田さん。同期に義勇さんというスゴい人がいてその才能の差を知りながらも鬼殺隊に所属し続け、少しでも役に立とうとしてる良い人です。年を重ねれば重ねるほど、その行為が難しいと気付かされます。ちなみに、アルファベットで書いたぐらいではこの条文の適用からは逃れられません

アルファベットで書いても普通な方法だとNGだぞ

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極めて簡単で、かつ、ありふれた標章は登録NG(第3条1項5号)

典型的な例は模様で言うと単なる直線や円、球や直方体。
鬼滅の刃関連でいくと善逸(ぜんいつ)くんの着ている陣羽織の三角の柄。これなんかが該当するでしょうか?鬼殺隊のみんながコレを着て活動してて、例えば日本中で隊士が活躍してて、「あ、鬼殺隊の人だ」「まえに、お願いした時はいいサービスだったわ。」「やっぱり鬼退治は鬼殺隊よね~」等と、主婦の井戸端会議にも話題が登るぐらいになると、3条2項の特例で登録されるかもしれませんが。

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その他識別力のないものは登録NG(3条1項6号)

元号である「大正」や、モノを数える・計る単位「メートル」等はみんなが安心して使いたい(パッケージの製造年月日や仕様の表記に使う)ので独占させるわけにはいきません。上記とは少し毛並みが違いますが、○○110番と言うものも過去にこの条文を根拠に登録NGとされています。例えば、単純な文字のみの「鍵の110番」をサービス「錠前の取付け又は修理」に指定している場合等。鬼殺隊のネーミング関連でいくと、単純な文字で構成する「鬼の110番」というサービス名はこの条文に当たり登録されないでしょう。

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いかがでした?
鬼滅関連で記事にしたため、かなり強引な感じになったかもしれませんがお許しください。物語の中での鬼殺隊は、世に知られていないサービスでしたよね。アニメの最後のシーンで警察と揉めそうになってたゼンイツ君も言ってました。ということで公報等で公開される商標登録制度とは馴染みませんが、面白半分に読んで頂ければ幸いです。また、拒絶理由には3条の他にも4条等がありますのでご注意ください。この記事にたどりつかれた方は、商標登録の登録要件とか詳しくない方も多いと思いますので、なんとなく「こんなネーミングは(商品・サービスの関係次第では)駄目なんだぁ」という感じでふわっと理解していただければ嬉しいです。

以下、営業です。
ネタバレ注意(アニメ派・コミックス・単行本派)の方はご注意ください、っていっても予想できる範囲のネタバレですが

ラスボスである鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)は退治してしまったので鬼殺隊は解散されました。物語の延長の世界線でももう<鬼を退治するという>このサービスが提供されることはないでしょう。

現在、わたし達の世界では、新型ウィルスのためにたくさんの人が困っています。新しい商品・サービスで世界を救う、、とまではいかなくても、より住みやすい世界にするのはあなたかもしれません。商標登録、自分でする場合以外は専門家にお任せください。
セージ弁理士事務所は初めて特許庁に手続きされる方には直接面談・オンライン面談にてお客様の要望を聞いてから手続きします。お問い合わせはコチラから。

By |2020-11-18T22:05:40+09:005月 26th, 2020|