キャッチフレーズは商標登録できる?

お昼にほっかほっか亭のり弁当を買ってきて食べた時に、付いていた割りばしに次のような言葉が書いてありました。「わたしの街の台所」と。

ムム、これはひょっとして、商標登録してあるのじゃなかろーかと思って調べたところやはり商標登録されてました。

でも結構古いですね。この登録。

キャッチフレーズは以前3条1項6号に該当するということで、登録は認められませんでした。商標法3条1項各号にはビジネスで商標を使うみんなのため、登録できない商標が列挙されています。

商標法 第3条 自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
(中略)
六 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標

従来はこの条文の解釈で、キャッチフレーズは登録されなかったんですよー。でも、2016年4月から審査官の使うマニュアルである審査基準が変わって、「わたしの街の台所」のような言葉も登録されるようになったんですよー。という流れに持っていきたかったのに。

キャッチフレーズは登録できる

登録が2004年ですか。
経過情報を見ても、拒絶理由がかかっていないので、スンナリ登録されたようです。 あ、キャッチフレーズってひょっとして語尾が動詞で終わってるということなんでしょうか?

水と生きる  登録4884535号  サントリーホールディングス株式会社

みたいな。でも、これも登録は2005年なんですよね。

御湯と生きる  登録5288701号  日清食品ホールディングス株式会社

ってゆうのも登録されてますね。2009年なので、サントリーさんのにインスパイアされた感じでしょうか、、。

ちょっとキャッチフレーズの意味を確認してみますね(以下Wikipediaより、下線と読み仮名はこちらで振りました)。

キャッチコピー、キャッチフレーズとは、主に商品や作品の広告など、何らかの告知や宣伝に用いられ、謳(うた)い文句や煽(あお)り文句となる文章である。惹句(じゃっく)とも呼ばれる。

やはり、宣伝文句という理解でいいようです。
ちなみに、松屋で牛めしを食べていた時によく聞くフレーズ「みんなの食卓でありたい」ってフレーズは文字商標では登録されてませんでしたが、音商標で「みんなのしょくたくでありたい まつや」で登録されてました(登録5903788号 株式会社松屋フーズ)。これ(音商標)は新しいタイプの商標なので、登録は比較的新しく2016年です。あの音楽は頭に残りますもんね。

なんかグダグダになっちゃいましたが、キャッチフレーズも登録されるということで。今回の記事は以上です。読んで頂き、、、

いや、専門家たるものこんな感じではいけない、と思いネット検索したところ、以下記事を見つけました(下線は弊所にて。この頃はまだ日本の商標登録実務をやってなかったものでこんな感じでスイマセン)。

商標審査基準[第 11 版]では,標語やキャッチフレーズ等については,原則として「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない」ものとして取扱うことが明記されており,原則として商標法3条1項6 号に該当するとされていた。しかし、実際には,明らかに標語やキャッチフレーズと思われるものが登録されおり、審査・審判の帰趨について、出願人の予見可能性が確保されていなかった

パテント2017 Vol.70 No. 5 岡本智之先生
「商標法3条1項6号審査基準改訂の考察」より

帰趨(きすう)=事が最終的に落ち着くこと。行き着くところ(デジタル大辞泉より)。  どうやら出願にあたる審査官によって問題アリ・問題ナシの「揺れやブレ」があったようです。審査官にブレがあると困るんですよねー。こちらはご依頼があった商標で見積りして、拒絶理由対応があるのかまで検討しているのに、、、。

グチは置いといて、これが審査基準が11版から12版(2017年4月1日から適用、記事を書いてる時点の最新のものは13版)になる時に次のようになりました(けっこう長いのでスマホで見てる方は一回飛ばして後から確認してもいいかも)。

2.指定商品若しくは指定役務の宣伝広告、又は指定商品若しくは指定役務との直接的な関連性は弱いものの企業理念・経営方針等を表示する標章のみからなる商標について
(1) 出願商標が、その商品若しくは役務の宣伝広告又は企業理念・経営方針等を普通に用いられる方法で表示したものとしてのみ認識させる場合には、本号に該当すると判断する。
出願商標が、その商品若しくは役務の宣伝広告又は企業理念・経営方針等としてのみならず、造語等としても認識できる場合には、本号に該当しないと判断する。
(2) 出願商標が、その商品又は役務の宣伝広告としてのみ認識されるか否かは、全体から生じる観念と指定商品又は指定役務との関連性、指定商品又は指定役務の取引の実情、商標の構成及び態様等を総合的に勘案して判断する。
(ア) 商品又は役務の宣伝広告を表示したものとしてのみ認識させる事情
(例)
① 指定商品又は指定役務の説明を表すこと
② 指定商品又は指定役務の特性優位性を表すこと
③ 指定商品又は指定役務の品質特徴を簡潔に表すこと
④ 商品又は役務の宣伝広告に一般的に使用される語句からなること(ただし、指定商品又は指定役務の宣伝広告に実際に使用されている例があることは要しない)

(イ) 商品又は役務の宣伝広告以外を認識させる事情
(例)
① 指定商品又は指定役務との関係で直接的、具体的な意味合いが認められないこと
出願人が出願商標を一定期間自他商品・役務識別標識として使用しているのに対し、第三者が出願商標と同一又は類似の語句を宣伝広告として使用していないこと
(3) 出願商標が、企業理念・経営方針等としてのみ認識されるか否かは、全体から生ずる観念、取引の実情、全体の構成及び態様等を総合的に勘案して判断する。
(ア) 企業理念・経営方針等としてのみ認識させる事情
(例)
① 企業の特性優位性を記述すること
② 企業理念・経営方針等を表す際に一般的に使用される語句で記述していること
(イ) 企業理念・経営方針等以外を認識させる事情
(例)
出願人が出願商標を一定期間自他商品・役務識別標識として使用しているのに対し、第三者が出願商標と同一又は類似の語句を企業理念・経営方針等を表すものとして使用していないこと

ということです。ちょっと長いし慣れない言葉が続くと読みにくいですよね。ちょっと具体的な部分は目をつむって強引に3行くらいでまとめてみましょうか。

キャッチフレーズは、商品などの広告や企業などのスローガンとだけ認識させるようなものは登録しないよ。でも造語とかならオッケー。特許庁の方でいろいろなビジネス実態を考慮して登録の可否を判断するけどな。

どうですか?? 少しわかりやすくなりました!?。

ここで上記基準に改訂される前の拒絶・登録例を見ていきましょう。いずれも標準文字商標といって文字のみからなる単純な商標で、拒絶されたものは審判という通常より複雑な手続を経て登録されないと再確認されたものです。

拒絶されたもの

「みなんにやさしい」
商願2010-095221(不服2011-22381)
指定商品:第3類 せっけん類

「初めてでも安心」

商願2009-091043(不服2010-027106)
指定役務:第45類  結婚又は交際を希望する者への異性の紹介、他
登録されたもの
『初めてでも安心の』
第5507453号(審判を経ずに登録)
指定役務:第45類 結婚又は交際を希望する者への異性の紹介、他
『たいへんよくできました』
第5480336号(不服2011-018890)
指定商品:第29類 カレー・シチュー又はスープのもと、他

2番目と3番目などは「の」のアリ・なしで、拒絶されたり、登録されたりするんですねー。
感心してる場合じゃないです。クライアントからご依頼が来たときに注意しないといけません。

以下、営業です。
キャッチフレーズも商標登録できます(できないモノもあるけど)。
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By |2021-04-21T09:53:12+09:001月 29th, 2019|