先願主義(商標は早い者勝ち)とは?

商標ニュース解説でよく弁理士や弁護士が「商標は早い者勝ち」というフレーズを使っているのを見ます。この間メディアにて多分専門外の弁護士さんが自信なさそうに、ちょっこっと解説していました。弁護士さんとなると自分の得意分野以外の法律についてもテレビでコメント求められて大変ですね。ということで今回の記事は商標は早い者勝ち(堅苦しい言葉では先願主義と言います)についてです。

一番早い出願人がその商標の登録を受けられる

商標についての法律(商標法)には出願の先後(せんご)についてこう書いています。

第8条 同一又は類似の商品又は役務について使用をする同一又は類似の商標について異なつた日に二以上の商標登録出願があつたときは、最先の商標登録出願人のみがその商標について商標登録を受けることができる。
(2項、5項 後述)

上記の条文を簡単にいうと、同じような業界で同じような商標を登録しようと特許庁に手続きした場合には、一番早く出願した者がその商標を登録することが出来ますよ、という意味です。これが、いわゆる先願主義(せんがんしゅぎ)、商標は早い者勝ち、と言われる理由です。同じようなというのは、当然「完全に一致」なものは含まれますし、似ているものも含まれます

商標は時代のトレンドに敏感です。古くは皇太子さまが結婚された時にお妃である美智子さまの愛称「ミッチー」の商標出願がたくさん出されたという噂を聞いたことがあります(注:記事を書いたのは平成です)。2018年の冬季オリンピックで活躍した女子カーリングチームが試合中に使っていた「そだねー」という言葉も脚光を浴びました。

流行りコトバがあると自分のところの商標として登録したい、と思う人はいるようで同年の2月末から3月にかけて「そだねー」商標登録出願が何件か出されました。その出願人の中に北海道のお土産として有名な「マルセイバターサンド」で知られる六花亭さんがいたことで、ちょっとしたニュースにもなりました。

自分で使用する商標を商標登録するのが法律が定める原則なのですが、なかには悪い人に商標を独占させたくないという理由から商標制度を利用する会社などもあります。六花亭さんの場合もそのような趣旨だったとのアナウンスが会社のホームページにあったそうです。

同日に同じ商標の出願、そんなことアル! 

話しがそれましたが、「そだねー」商標出願から、先願主義のフィルターを使って「どれが登録されるか・登録されないか」を見ていきましょう。シンプルな「そだねー」の文字からなる商標出願は6件くらいあるのですが、今回は食品、それもパンに絞ってみていきましょう、これで単純にどっちが早いかが問題になってきます(下の図の白セルの小西さんの出願は除いて考えます)。

この図を見ると、六花亭製菓さん(紫のセル)は先願主義の理由で商標登録を受けることが出来ないことになります。なぜならば、パンを指定しているこの中では一番遅い出願だからです。 では赤枠と青枠の出願人は同じ日(2018年2月27日)に出しています。こういう場合はどうなるのでしょうか?

法律は同じ日に手続きがされた場合も想定しています。

8条2項 同一又は類似の商品又は役務について使用をする同一又は類似の商標について同日に二以上の商標登録出願があつたときは、商標登録出願人の協議により定めた一の商標登録出願人のみがその商標について商標登録を受けることができる。

協議という言葉があるのにお気づきでしょうか? 要は「話し合って決めてください」ということです。実際、この2つの出願には協議指令が出されているようで、出願の経過情報からも分かります(引用:特許情報プラットフォーム)。

話し合いで双方譲らなかったらクジ引き

今回の「そだねー」商標の場合は、たまたま同じ商標が同じ日に同じ商品などを指定されて出されたレアケースでしたが、話し合いの結果、どちらも譲らなかった場合のケースも法律は想定しています。

8条5項 第二項の協議が成立せず、又は前項の規定により指定した期間内に同項の規定による届出がないときは、特許庁長官が行う公正な方法によるくじにより定めた一の商標登録出願人のみが商標登録を受けることができる。

そうなんです! 最終的には「クジ引き」をすることになっているんです。同じ知的財産法の範囲である特許などは特許庁が受け付けた時分まで正確に見るのでクジ引きになるようなことはないのですが、商標に限ってはそこまで細かく管理していないのでクジ引きということになっています。

補足:そだねー出願もクジ引きになるか、、、と思ったんですが、どうやら違う拒絶理由通知が出ているようです。2018年の流行語になるくらいバズったワードなのでおそらく誰のものでもない、誰かの商品・サービスを特定できるようなものではないといった理由で特許庁が拒絶したいのかなぁと思われます。

以下、営業です。
自分のブランドネームを商標登録をしたいと思っていますか? 商標は早い者勝ちなのでステキなネーミングを、出来るだけ早く特許庁に手続きするのがおススメです。自分でやろうと勉強している間に誰かに先を越されたなんてことのないように。セージ弁理士事務所は初めて特許庁に手続きされる方には直接面談・オンライン面談にてお客様の要望を聞いてから手続きします。お問い合わせはコチラから。ちなみにカーリングは水上のチェスと呼ばれているということでアイキャッチ画像はチェスとしました。

By |2022-11-13T14:40:02+09:002月 20th, 2019|