それ登録しちゃダメでしょって時は情報提供を! 

噂?によると日本で出される商標登録出願は1日平均3300件、ちゃんとした統計でも1年で約15.5万件(2017年)くらいの申請がなされています。アメリカ(約50万件)や中国(約600万件)とは比べようもないですが、それでもたくさんの商標が登録手続きを待っています。

全部の商標が出願人が自分で考えたようなもの・デザインされたものであれば良いのですが、世の中に流行っている言葉を出してみよう、というのも多くあります。2018年の流行語「そだねー」の出願等はその顕著なものですね。 誰のものでもないコトバ等の商標であれば、その商標を自分のビジネスに使うのは良いのですが、中にはもう既に結構広まってたくさんの人が使っているというものもあります。

どんなものか、というとこの記事を書いている2019年2月初旬の時点で話題となっている商標(コトバ)として「磯ラーメン」があります。10年~20年前であれば「磯ラーメン」と聞いても「?」だったっと思います。

今ではちゃんとウィキペディアにも載っています(以下ウィキペディアより引用)。

磯ラーメン(いそラーメン)は、主に岩手県三陸沿岸地方から青森県八戸市にかけて供されるご当地ラーメン。
東京都世田谷区のリクリエーションズという会社が、2018年秋頃、特許庁に『磯ラーメン』の商標登録を出願。これが認められれば飲食店等が『磯ラーメン』という商品名を使えなくなる可能性がある。

です。岩手や青森のラーメン屋さんにとっては一大事です。飲食店のメニューは商標であるか、議論のあるところなのですが、東京地裁の判決(東京地判平成28.2.6最高裁HP〔平成26年(ワ)第11616号〕)ではメニューに商標登録されているネーミングを使うことは商標法2条3項3号「役務の提供を受ける者の利用に供する物に標章を付する行為」の商標の使用に該当すると判断しているので、やはり商標登録手続きがされているようであれば何らかのアクションを取りたいところです。

基本的に一般的に一企業や一個人に独占させたらヤバい商標のようなものは審査官が拒絶(登録しない、とする)してくれるのですが、古くは「阪神優勝」、新しいところでは「ティラミスヒーロー及びネコの図」みたいのが登録になっている事例を考えると「特許庁、ちゃんと仕事しろよ!」と言いたいところです(審査官殿へ わたしではなく一般的な意見としての上から目線です)。

では、登録に問題がありそうな商標に第三者(時には関係がある人)として何も手立てがないのでしょうか?審査官がちゃんと仕事するのかドキドキしながら待つしかないのでしょうか? いいえ、あるんです!それが情報提供です。

誰でも、特許庁長官に情報提供できる

情報提供とは、特許庁のHPに書いてある説明を抜粋すると「審査の的確性及び迅速性の向上のために」、広く意見を聞くということになります。この情報提供が認められている根拠は、商標法を運用するために必要な細かいルールなどを定めた規則(商標法施行規則)に書かれています。

(情報の提供)
第19条 商標登録出願があつたときは、何人も、特許庁長官に対し、当該商標登録出願に関し、刊行物又は商標登録出願の願書の写しその他の書類を提出することにより当該商標登録出願が商標法第三条、第四条第一項第一号、第六号から第十一号まで、第十五号から第十九号まで、第七条の二第一項、第八条第二項若しくは第五項の規定により登録することができないものである旨の情報を提供することができる。ただし、当該商標登録出願が特許庁に係属しなくなつたときは、この限りでない。
2~3(省略)

情報提供するには、どういう理由でこの商標を登録するのは許さん!か理由を提示しないといけません。主張できる理由は上記規則にも書いてある「3条、4条1項1号、6~11号、15号~19号、7条の2第1項、8条2項・5項」です。

それぞれ具体的には書きませんが、3条は自分と他人の商品・サービスを識別できないようなものは登録はダメで、4条は既に世の中にあるコトバ(国・政府等・知られている商標などなど)等との関係から登録が認められないものです。7条の2は地域団体商標関連、8条は出願が先か後かといったマターです。

「磯ラーメン」商標も岩手日報さんの記事よると関係者が情報提供した、とのことですので4条1項10号(未登録周知商標同一類似)に違反するから登録しないでください、としたものと思われます。

「磯ラーメン」大槌で困惑 東京の企業が商標出願
(前略)特許庁によると、昨年9月、RECREATIONS(リクリエーションズ、東京都渋谷区)が商標登録を出願。県から情報を得た大槌町は昨年11月、「磯ラーメン発祥の地」をうたう販売店舗ガイドや新聞記事などをまとめ、同庁に資料提供した。登録審査には平均で9カ月程度かかる。町は結果通知も求めた。(後略)
https://www.iwate-np.co.jp/article/2019/1/30/45220

追記:2019年2月15日
どうやら東京の企業は出願を取り下げたようです。これにて一件落着(いっけんらくちゃく)ですね。

「磯ラーメン」商標出願取り下げ 東京の企業、大槌に謝罪
飲食店などを経営するRECREATIONS(リクリエーションズ、東京都渋谷区)が本県沿岸部などで販売されている「磯ラーメン」の商標登録を特許庁に出願していた問題で、同社は14日、岩手日報社の取材に対し、「出願を取り下げた」と答えた。(以下略)
https://www.iwate-np.co.jp/article/2019/2/15/46717

以下、営業です。
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By |2020-06-18T10:02:30+09:002月 8th, 2019|