パロディ商標は登録できる?

旅行に行ったときのお土産としてパロディ商品等買われたこともあるのではないでしょうか? 友人や知人にお土産を見せた時の反応など、買う側も、貰う側も楽しめますよね。下のツイート等は、マジックインキのパロディ商品のふりかけですね。

今回の記事はパロディ商標についてです。
パロディ、明らかに西洋由来のこの言葉、先ずパロディの意味から確認しておきましょう。

パロディ(英語: parody、ギリシア語: παρωδια)は、現代の慣用においては他の芸術作品を揶揄や風刺、批判する目的を持って模倣した作品、あるいはその手法のことを指す。(引用:Wikipediaより)

模倣(もほう)です。パロディには真似る「もと」となる存在があり、オリジナルなくしてパロディなしです。上記ツイッターのふりかけ等は文具メーカーとコラボ(協力・同意)のもと商品を販売しているかと思いますが、パロディ商標となると話しは別と思います。

それでも、商標登録して安心して商売したい。オリジナルブランドの権利者から商標権侵害って言われたくない、と思って商標登録の手続きをするのでしょう。

拒絶(無効)パロディ商標例

それでは、特許庁が最終的な判断を含めて「登録することができない」と言ったパロディ商標を見ていきましょう。


指定商品は25類の「洋服」など。このクマのシルエットの商標(商願2006-34819、登録4994944号)は審査段階で何の問題もなく登録されてしまった商標です(後に無効となっています)。この商標が一度通ってしまったことから、類似のシリーズ(指定商品は同様に25類の洋服など)を同じ出願人(北海道の観光関連商事の会社)が続々と出すのでした。


ブタのシルエットの商標(商願2007-35415)。


ウマのシルエットの商標(商願2007-35416)がそれぞれ申請されました。しかし、ブタやウマは審査官のチェックで登録されませんでした。

これらの商標、海外有名ブランドのパロディなんですけど、お分かりになりますよね。英語と動物のシルエットを配置した英文4文字のあのブランドです。

そうです、「PUMA」です(登録3324304ほか)。

ブタとウマは、プーマが原因で登録されませんでした。クマもプーマから無効審判請求されて負けてしまいました。4文字のアルファベットのうち3文字まで同一ですもんね。まぁパロディはパロディ元のブランドが何かわからないと面白くない、でも似せすぎると拒絶される、難しいですね。ギリギリのラインが重要です。

登録(異議申立にも耐えた)パロディ商標例

今度は、登録(非類似と判断)されたパロディ商標です。ヒアカムズニューチャレンジャーです(ニューチャレンジャーと言いましたが、こちらの方が出願は先の2005年で、クマやブタ等とは関係ない個人の方です)。

指定商品は25類の「Tシャツ,帽子」です。シーサとそのシルエット・英文その他沖縄のお土産っぽい説明が付いてます(商願2005-61595、第5040036号)。シーサのシルエットとSHI-SAの英文のレイアウト等明らかにプーマを意識していますが、こちらは登録されました。特許庁も先登録の似ている読み方の商標(シーサー/SHIESSER)を理由に登録拒否をしようとしたのですが、最終的には登録となりました。プーマも自分のブランドを根拠にがんばったのですが、異議申立の時点ではシーサが勝ちました(登録維持)。さすが、沖縄の守り神強いですね、、、。

いやいや、ブタやウマが弱いから登録されなかったわけではありません。

何故、SHI-SAは生き残っているか?

クマやブタはダメだったのに、なぜシーサは登録(登録維持)されているのでしょうか?その理由を知るためには、やはり資料(審決各種公報)にあたるのが一番です。このシーサ登録商標は、拒絶査定、取消決定等あらゆる手段・方法でやっつけられそうになりました、そしてまだ無効審判で争っています。

クマが無効にされた理由は以下の通りです(下線は当サイトにて)。

(中略)本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。
(引用:無効2011-890089より)

4条1項7号は公序良俗(こうじょりょうぞく)に反するものは登録できない、とするもの4条1項15号は出所の混同(しゅっしょのこんどう)をまねくおそれのある商標は登録できないとする規定です。

シーサーが登録維持となった理由は以下の通りです(下線は当サイトにて)。

(中略)両商標は類似しないというべきものである。そうすると、本件商標は商標法第4条第1項第19号にいう「類似の商標」に当たらないことになるから、上記主張は採用することはできないというべきである。したがって、その余の点について判断するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものでないから、商標法第43条の2第1号の規定に基づき、結論のとおり決定する。
引用:異議2007-900349より

抜き出したところが途中からなので「ちょっと何言ってるかわからない」かもしれませんが、結局の所、プーマ商標とシーサーの商標は似てないので、登録を取り消すことはできない、と言ってます。でもクマ商標での無効理由となった4条1項7号は取消しの理由として主張していなかったということで、プーマも当該理由ならワンチャンあるのではと無効審判を戦っているのでしょう。

まとめ

パロディ商標も、外観(見た目)・称呼(ネーミング)・観念(イメージ)を少しずつずらしていけば登録される可能性はあります。 

比較的最近のニュースでも高級時計ブランドの「フランクミュラー」のパロディ商標「フランク三浦」(正確にはうらの漢字に右上の点がない)が最終的に裁判所の判断では問題とならなかったという判断がされました。外観や価格体などが違うということで出所の混同がおこならない、ということが登録維持の理由なのですですが、パロディ商標を登録するとなるとオリジナルブランドの本家からの訴訟は覚悟しないといけませんね。

また、超有名ブランドなどを真似る場合は不正競争防止法でやっつけられる可能性もあります(スナックシャネル事件)。

ということで以下、いつもは営業ですが、今回はお詫びです。
弊所の方針として、パロディ商標の登録手続きのご依頼はお断りします。
パロディ商標は、拒絶理由通知や審判等の対応でもうかる商売とは思うのですが、その分オリジナルネーミングの商標保護に時間を割けなくなってしまいますので、この点ご了承ください。

By |2019-07-16T11:50:47+09:002月 1st, 2019|