飲食始めるんですが、商標登録は必要ですか?

商標は商品の固有名詞(例:トヨタのコンパクトカーならアクア、ホンダのであればフィット等)と思っている方もいらっしゃると多いと思うのですが、法律(商標法)も以前はそのように規定していました(この記事は2019年に記載した記事です)。

昭和終わり頃(1990年)の定義要約
「商標」とは、文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)であつて、業として商品を生産等する者がその商品について使用をするもの

平成の初め頃(1992年)の定義要約
「商標」とは、標章(同上)であつて、業として商品を生産等する者がその商品について使用をするもの業として役務を提供等する者がその役務について使用をするもの

令和元年現在(2019年)の定義要約
「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」)であつて、業として商品を生産等する者がその商品について使用をするもの業として役務を提供等する者がその役務について使用をするもの

でも、時代と共に商標とは何か?という概念も変わってきます。何がいいたいかというと、商品だけじゃなくて、サービスの固有名詞も1990年代から商標に含まれるようになってきました。つまりお店の名前なんかも商標に入ってきて法律の保護の対象になってるんですよ。

ファミレスは商標登録してる

フードサービスのお店を始める、としてどのタイミングでお店の名前を考えるのでしょうか? お店を始めるぞ!と考えた時の方も入れば、お金を借りたり、メニューを考えたりして最後に、という方もいると思います。

そしてそのネーミング、開業届けに屋号として記載し、税務署に届けて終わり。というのが大多数の場合じゃないでしょうか? 商標登録なんて、、、と思うかもしれませんが、フードビジネスでもお店の名前(ロゴ含む)を商標登録しているところがあります。全国展開を行っているファミリーレストラン等ですね。

出典:特許情報プラットフォーム

なぜ登録するか?といいますと、同じ又は似たような名前で食事サービスを提供し始めた人がいたら、商標権に基づいて止めさせることができるからですね。

不競法では対応しにくい

お店の名前を法律で保護する制度として、商標法以外にも不正競争防止法(以下、不競法)というものもあるんですが、不競法で保護してもらおうとすると条件があるんですよね。そのお店の名前が有名でないといけないんです。また、超有名な場合は、まぎらわしくて間違えるような使い方をしていない場合も、不競法の法律の保護を受けられます。

でも、有名とか超有名(法律的には周知とか著名という言葉を使ってます)って誰が、最終的に判断するの?となると、最終的には裁判所なんでよね。そして、その判断資料として、お店の代表であるあなたが証拠を提出しないといけないんですけど、テレビの放送でCM流してます、新聞に継続して広告打ってます、とか小さいお店だとほぼ不可能ですよね。ということで、不競法の保護は期待しないのがいいでしょう。

小さいお店は大丈夫!?

まぁ、お店の名前を商標登録して商売するような会社は、そのお店と似たような名前を使って商売する悪い人に対抗する為に商標登録しているんであって、たまたま同じ名前を使ってるような誠実に商売する人に対しては、「その名前、ウチの商標とカブってので使わないように」なんて、クレームは入れてこないだろう、と思われるかもしれませんが、2019年10月、週刊文春オンラインの記事でこんな報道がありました。

大阪の人気たこ焼きチェーン「くくる」商標めぐり全国でトラブルが続発!

大阪土産を求める客で連日賑わう東海道新幹線の新大阪駅。「串カツ」「ねぎ焼き」といったご当地グルメが並ぶフードコードで一際長い行列が出来ているのが大阪名物の代名詞「たこ焼き」を販売する「たこ家道頓堀くくる」だ。道頓堀に本店を構え、全国に50以上の支店を持つ人気チェーン店である。 そんな人気チェーンの商標をめぐって、日本各地の個人店とトラブルが起きていることが「週刊文春デジタル」の取材でわかった。

「たこ家道頓堀くくる」を経営するのは、大阪に本社を持つ「白ハト食品工業株式会社」。同社は1959年の創業。街のアイスクリーム屋からスタートした。(中略)その白ハト食品の代理人弁護士から、いま全国の「くくる」という名前の個人飲食店主に、次々と内容証明が届いているのだ。(後略)
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191010-00014601-bunshun-soci

要は、「くくる」というワードを含む登録商標を持っているので、同名のお店の名前は使ってくれるなよ、という警告を日本各地の「くくる」さんに通知している、という事態が発生しているそうです。

イメージです

通知書には警告の根拠として「道頓堀 くくる たこ家」の登録商標と、「くくる」は有名なお店の名前です、とのことで不競法も理由に挙げてます。

普通の使用はOKなんだけど、、

商標法には商標権の効力が及ばない使い方が規定されてあって、自分のとこの名前を普通に使用する分には問題ないよ的なことも書いてあるにはあるんですが、普通の人は裁判沙汰になるのは嫌うので、警告されたらお店の名前を変えたりするのはしょうがないですよね。

裁判で、「うちのお店の看板やメニューに書いている名前は、商標的な態様なものではなく、常識の範囲内の使用です!」って主張するにしても、時間もかかるし、商標問題が得意な弁護士さんを雇うとなると大変ですしお金もかかります。

(商標権の効力が及ばない範囲)
第二十六条 商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。
一 自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標
(以下、略)

費用と手続きがネック?

じゃあ、なぜお店の名前を商標登録しないか?というと、1店舗だけなら要らないでしょ、登録の仕方も知らないし、お金もかかるし、めんどくさいし、といったところが主な考えられる理由だと思います。

わたしの場合は、フードビジネスではないですけど、自分のとこの事務所名、「寺田特許事務所」とかじゃなかったので、念のため商標登録してます。でも、それはやり方知ってるからなんですよね。名前というと、子供が生まれたら戸籍に登録、会社をするなら法人登記、は必須ですが、お店を始める時に開業届は出してても、商標登録は、、、、、任意ですから

商標までお金かけるか悩むイメージ

将来トラブルにならなければいいんですが、名前に書ける保険として考えれば割り切れるかもしれません。理論上、商標の一応の権利期間である10年(更新可)にかかる費用の最安は44,900円(令和4年4月1日から登録料が値上がりしました)なので、ひと月374円ぐらいです(弊所で対応した場合:約875円)。

ユニークなのは取っとくと安心

インターネット検索して、何百件もヒットする名前だと登録しなくてもいいと思います。特許庁の登録するかどうかの審査でも、ありふれた名称は登録しないということになっているので。でも、ビジネスを成功させようと思ったら他の店舗との差別化だったりもしますから、お店の名前がどこにもない特徴的なものだったりする場合もありますよね。後から同じ名前を使い始めた人が商標登録して、警告されるなんてことのないようにしたいものです。

以下、営業です。
ということで、お金かかるけど、専門家に頼んでみようかと思っている方。
セージ弁理士事務所は初めて特許庁に手続きされる方には直接面談・オンライン面談にてお客様の要望を聞いてから手続きします。お問い合わせはコチラから。

By |2024-01-11T08:15:30+09:0010月 11th, 2019|