果物ブランドは海外商標登録の検討を!

みなさんブドウ好きですか?今は種なしのものも増えて甘くておいしい品種が増えましたよね。定番の巨峰とか、デラウェアピオーネ、そして現在人気とされているシャインマスカット。ここら辺は聞いたことがあると思うんですが、先日、知人と話してた時に「瀬戸ジャイアンツ」という品種も聞きました。そんな少年野球チーム名みたいな品種もあるんだなぁ、と思って図書館で本を借りてきてちょっと調べてみました。

平成28年産特産果樹生産動態等調査をもとに作成

借りた本(植原宣紘さん編著の『ブドウ品種総図鑑』(創森社))には2015年のデータ表でトップ50まで載っていたのですが、最新のデータで作り直して瀬戸ジャイアンツが表示されるように作った表が上の図で、これらが日本の主要なぶどう品種みたいです。

実際はブドウを植えている土地の広さランキングで、瀬戸ジャイアンツは18位です。収穫量もそんなに変わらないはずです。ここにあるネーミングは品種名なので、基本的にはブランド(商標)登録できません。それは、法律(商標法)にそのように規定しているからなのですが、時々、どっち(品種名)がどっち(商標名)となります。

第四条 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
十四 種苗法(平成十年法律第八十三号)第十八条第一項の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であつて、その品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

海外では偽ブランドフルーツに注意!?

品種名は、基本的に日本国内ではそのフルーツ等に商標名として登録できないのですが、じゃあどうやってウチの品種を他のとこの品種と区別するの、という時に商標名が役に立ちます。でもそのブランドネームが中国で関係のない第三者に登録されてしまうことがあります。

品種を死守せよ!シャインマスカットの対中闘争  <2019.5.29 13:00産経WEST>

日本生まれの農産物なのに商標権侵害で中国に訴えられる-。冗談のような話だが、今そこにある危機なのだ。岡山では近年、モモやブドウの県産ブランドについて、中国や香港、台湾での商標出願を加速させている。背景には、日本生まれの農産物が海外で無断で商標出願されたり、品種が海外に流出、栽培されて流通したりする被害が相次いでいることがある。(後略)
https://www.sankei.com/west/news/190529/wst1905290019-n1.html


岡山
シャインマスカット晴王という登録商標で知られていて、高くておいしいそうです。上記ニュース記事のなかでは、「晴王」を海外に輸出するために、台湾・香港で商標登録したが、中国では先に同名ブランドが出願されて登録に苦戦していると書かれています。

中国におけるシャインマスカットの晴王商願

2019年5月の終わりの記事なので、この記事を書いている10月の時点でどうなっているか調べてみました。すると、中国における「晴王」ブランドの登録はやはり未だ達成できていないようです。一回、登録NGと当局から言われて、不服を申し立てている段階です。

出典:中国の国家知識産権商標局 中国商標網より

ちなみに、商標の出願人は中国語で「全国农业协同组合连合会」となっているので、全農(JA)が東京で行っているようです。後でチェックしてみたら日本の「晴王」の登録商標も権利者は全農さんなんですよね。

正統な権利者であるからといって油断大敵

日本においてそのネーミングの商標権者だからといって、海外でスンナリその商標が登録されるか、といったら上記ニュース報道の例を見るように非常に難しいことになりそうです。特に、中国では日本の1年の商標出願件数の50倍ともされる商標登録の申請が行われているので、いろいろな商標が登録手続きされています。中国の市場規模(人口)はザックリ10億と日本の約10倍とは言え、中国当局に納付する登録料が比較的安いため、パクり商標もたくさんだされています。

上記グラフでは千以下の端数は切り捨てていますが、中国だけが突出していることがわかりますね。ドラゴンボールで例えたら、中国だけが、スーパーサイヤ人化してて、その他の国は、第一形態のフリーザにも及びません。

使う予定がなくても登録するのもアリ?

中国も使用予定であれば商標登録することが出来る制度を採用しています。日本の不使用取消審判に相当する制度も登録から3年となっていますので、大規模なビジネスを考えていなくても登録しておくのもブランド保護の観点からアリではないでしょうか?

アイヤ―、審判で取り消されたアル

京都の「宇治」というブランドを中国で登録していたけど、中国企業から不使用取消審判を請求されてしまった、といニュースもありましたので、もしビジネスで輸出した時は、使用証拠を確保しておきましょうね。

地名「宇治」 中国企業に商標登録の恐れ 宇治茶業界が危惧 <2019年10月1日 10:21>

中国で「宇治」の地名が、中国企業に商標登録される恐れがあることが30日分かった。これまでは京都府内の茶業者が登録していたが、商標の使用実績がないとして取り消しの瀬戸際にあり、代わって中国企業が登録を出願している。宇治市や府茶協同組合は茶業を中心に大きな影響を見込み、対応を急ぐ。(後略)

引用元:京都新聞より https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/29236

まとめ

海外で商標登録する目安は、登録までにかかる手数料と、海外の売り上げ高です。スポット的なものであれば、登録まで検討しないかもしれませんが、同じブランドネームで海外では違うメーカー・生産者のものとなるのは悲しいことです。商売のためなら何でもする悪い業者にブランドネームを取られて、後から対応する、といったことのないように注意したいものです。

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By |2020-09-16T10:07:15+09:0010月 28th, 2019|