日本酒の輸出、商標登録は大丈夫?

新しい元号「令和」もだんだん馴染んできたでしょうか? この記事を書いている2019年11月は即位パレードもあり、たくさんの人が沿道で何十年に一度のイベントに参加していました。令和と言えば、元号発表の担当となった令和おじさんこと菅官房長官が島根県や鳥取県に来たそうです。そこで、日本酒の輸出に関することに言及しているようでした。

菅氏、日本酒には「大変可能性がある」…輸出拡大支援へ具体策

菅官房長官は4日、鳥取県境港市で、日本酒などの輸出に取り組む酒造会社の店舗を視察し、日本酒の海外輸出拡大に向けた支援を強化する方針を表明した。具体策として〈1〉外国向けの新商品開発の支援〈2〉海外のバイヤーの日本への招請〈3〉農産品の知的財産権を規定する「地理的表示」の活用――を進める意向を示した。(以下略)
読売新聞より引用 https://www.yomiuri.co.jp/economy/20191104-OYT1T50116/

同じアルコール飲料でも、フランスなどのワインは世界的に売れている商品です。日本酒もグローバルな商品となるためには、新商品、海外バイヤー、地理的表示が大切とのこと。確かにそれらも重要ですが、輸出国における商標登録もマストですよね。

同名ブランドで売るには海外での登録も

日本酒で有名なブランドと言えば、「久保田」とかありますが、2000年代からメディア等を通じて良く聞く銘柄に「獺祭」という日本酒があります。国内で成功している「獺祭」の海外商標登録の状況を参考にどのような国でブランド保護を図れば良いのか調べてみましょう。

初めに、たくさんの国の状況を調べるために「Global Brand Database」というサイトを利用します。このサイトでは日本やアメリカ等、いろいろな国の商標を確認することができます。

獺祭の海外出願・登録の一部を表示

日本語のみのブランドネームでは検索も難しいですが、獺祭のラベルには、海外進出を考えてか英文でもそれとわかるようにデザインされているので、英文で「DASSAI」と打って上記の検索結果がヒットしました。

海外の登録先として、KR(韓国)、SG(シンガポール)、US(アメリカ)、MX(メキシコ)、ID(インドネシア)、CA(カナダ)に出願・登録していることがわかります。

中華圏の登録は?

外国でも人口の多いところがマーケットとして需要がありそうですね。インドネシア等は人口が約2.6億との統計もあります。やはり押さえておきたい市場です。しかし、上記サイトでは中国や台湾、香港(香港は中国とは別に登録が必要)は分かりません。

中華圏でも日本酒は売れそうです。ブランドネームが登録されてるか確認するためには、それぞれの国・地域の特許庁に当たるサイトにアクセスしなければなりません。中国は<国家知識産権局商標局 中国商標網>、台湾は<智慧財産局商標検索系統>、香港は<網上検索系統>で商標の出願・登録状況が確認できます。

それぞれ検索してみたところ、次のようにしっかり登録されていることがわかりました(ピックアップしたものは代表的なもので、他にも当該国・地域で複数の登録があります)。

ちなみに、台湾と香港は日本の商標登録を利用した国際登録という制度が利用できないため、特に気をつけて登録の手続き・更新の期限管理が必要です。

広島県のお酒の中国登録は?

まぁ、今まで見てきたのは業界大手の蔵元さんだから海外にも登録しているんでしょ、と思われた方、そんなことはないんですよ、ということを証明するために、広島の日本酒で人気ブランド(SAKE TIMEさん参照)の中国における商標登録を調べてみました。 なぜ中国かというと、市場が大きそうなのと、なんといっても同じ漢字の国。お酒の銘柄は漢字が多いのでパクられたら困りますもんね。

上記は、日本の商標権利者と中国の権利者が同じだったので、中国の悪い人に商標登録されてなくて良かった例です。調べた中には、中国の会社が同名ブランドを登録しているような状況もありました。3年後以内には中国市場で売りたいな、、と考えられてるようであれば先(進出前)に登録しておくのもアリです。

まとめ

海外で商標登録する目安は、登録までにかかる手数料と、海外の売り上げ高です。スポット的なものであれば、登録まで検討しないかもしれませんが、同じブランドネームで海外では違うメーカー・生産者のものとなるのは悲しいことです。商売のためなら何でもする悪い業者にブランドネームを取られて、後から対応する、といったことのないように注意したいものです。

以下、営業です。
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By |2019-12-21T14:24:32+09:0011月 11th, 2019|