2019年夏頃のニュースになりますが、香川県の小豆島の地名が中国で商標登録されているとして、日本側が当該登録手続きに対して、異議を申し立てるというニュースがありました。

「香川小豆島」の商標登録に異議申し立て 中国での申請めぐり香川県など
中国の商標局に「香川小豆島」の商標登録が申請された問題で、小豆島の食品組合や香川県などが異議申し立てを行うことになりました。(中略)香川県によりますと、中国大連市の個人が今年1月、麺類や調味料などの加工食品で「香川小豆島」という文字を商標として登録するよう中国の商標局に申請しました。申請が認められると、中国で小豆島の商品を販売する際、支障が出る恐れがあります。(後略)
https://www.sanyonews.jp/article/944003

香川県などが申立人となって中国当局に正式にクレームを入れた、とのことで日本側の主張が通って「香川小豆島」の登録が阻止できるといいですね。

小豆島といえば、香川県ですが、香川県のかつての国名「讃岐」が台湾で、商標登録されていて、日本人の讃岐うどん屋さんがトラブルに巻き込まれたというニュースが2007年~2008年にありました。この記事では、台湾の「讃岐」商標事件について振り返ります。

讃岐うどん事件とは?

事件を簡単に説明すると、ある日本人の方が台湾で、「讃岐うどん」という看板を掲げて、さぬきうどんを提供していたら、「讃岐」の登録商標を持っていた台湾企業からイチャモンつけられました。まぁ、正式に商標登録もってたから合法的なイチャモンなんですが、、。でも、讃岐うどんに讃岐うどんを使って何がいけないの?その商標登録の方がおかしいでしょ!ということを裁判所に訴えて、その主張が当局に認められて、「讃岐」商標登録はなくなって、堂々と讃岐うどんの看板掲げてうどん屋さんを続けることができるようになりました、というお話しです。

台湾の会社である南僑化学工業さんが1998年から自社ブランドの食品・飲食店のネーミングとして「讃岐」等を台湾の特許庁である知財局に登録しました。そして、「讃岐」のブランドを使って、うどんの麺等を販売していました。時は経ち、2006年、日本人のKさんが、台湾の台北市にうどん店オープンしました。Kさんのお店は本場の香川県で修行した本格的な讃岐うどんを提供する店として、現地に駐在の日本人サラリーマンや台湾のお客さんにも好評で人気店となりました。 少し時が経って2017年11月、Kさんは、突然、南僑さんからお店「さぬき」の名称の使用差し止め、または商標使用料の支払いを求められます。Kさんは自分の提供しているものは「讃岐うどん」なのに、、と戸惑いながらも、商標権の侵害行為が台湾では刑事事件として扱われることもあり、「さぬき」の使用を中止したKさんでした。 しかし、日本の関係機関とも相談した結果、やはり納得できないKさんは、問題となった商標登録に対して、無効・取消し処分の請求をし、台湾の裁判所にその請求が認められ、南僑さんから裁判所の判断に不服の訴え等もありましたが、Kさんは勝利したのでした。

写真はイメージです

台湾の登録商標を調べる<失効しているもの>

ということで、次は台湾の商標を検索してみて、問題となった「讃岐」商標登録を見つけてみます。報道では4つの商標があった、とのことです。漢字・ひらがな・カタカナ・ローマ字ですかね。

問題となった商標は、現在は権利は有効ではない為、少し気を付けて検索しないといけませんが、台湾の検索サイトも親切な設計となっているので、失効したものもサーチすることが出来ます。使用する調べ方は、ブーリアン検索です(申請人検索でも可)。

とりあえず、台湾の公式商標検索サイト(Boolean)に飛びます。
ステップ1で、註冊案(無効)をチェック。
ステップ2で、検索項目を増やすため水色の「加項」ボタンを押して、査詢欄位のところを申請人(中文)にして、運算元のところは「完全相同」を選んで、申請人(権利者)の欄に事件の当事者である「南僑化學工業股份有限公司」の中国語を入力する。そして査詢ボタンを押すと、現在は権利がなくなっている南僑さんの商標が出てきます。

ちょっと見にくいので、「讃岐」「さぬき」「サヌキ」「SANUKI」で絞った結果がこんな感じです。商標がわかりやすいように、「影像顕示」というボタンを押してます。

4つ以上ありますが、特にデザインされた文字というわけではなく、普通な感じですね。
中国ではまだ、日本の地名そのものの出願・登録されそうななので、法律的に対応しなきゃ、というニュースがよく聞かれますが、台湾については、商標法の改正があったり、讃岐うどん事件の反省もあってか厳しく審査されているようで、地名に関する大きなトラブルは聞かなくなった印象を受けます。

条文は? 現行法の拒絶理由をチェック

今回紹介した「讃岐」関連の登録商標が無効・取消しされた最大の原因は、讃岐が商品・サービスの品質(産地)に係るものだと誤認するから、というものです。日本のお客さんなら当然ですが、日本と交流のある台湾でも「讃岐」とうどんのパッケージに書いてあったら、あ、日本産のものかな、四国で製造されたものなのかな、等と消費者に思わせてしまうことは良くない為です。

最後に台湾の商標法をチェックしときます。
記事執筆時の最新の台湾商標法は2016年施行のものです。商標登録を認めない事由、いわゆる拒絶理由は、絶対的なものと相対的なものがありますが、ここでは絶対的拒絶理由を挙げておきます。

第29条 次に掲げる、識別性を具えていない情況のいずれかに該当する商標は、登録することができない。
1. 指定した商品又は役務の品質、用途、原料、産地又は関連する特性 を描写する説明のみで構成されたもの
2. 指定した商品又は役務の慣用標章又は名称のみで構成されたもの
3. その他、識別性を具えていない標識のみで構成されたもの前項第 1 号又は第 3 号が規定する情況は、出願人が使用しており、しかも取引上すでに出願人の商品又は役務を識別する標識となっている場合に、これを適用しない。商標図案に識別性を具えていない部分が含まれており、且つ、商標権の範囲に疑義が生じるおそれがある場合、出願人は該部分を専用としない旨を声明しなければならない。専用としない旨を声明していない場合は登録することができない。
(日本語和訳:特許庁 諸外国の法令・条約等より
https://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/mokuji.htm )

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By |2020-05-21T07:39:34+09:0010月 9th, 2019|