不正使用取消審判(51条の取消審判)とは?

今回は、不正使用取消審判について説明します。

これは、簡単に言うと、商標を保護する目的は、使ってる人もだけどそれを目印として買ったりサービスを受けたりする人たちのためなので、まぎらわしい使い方を狙ってやってると登録を取り消されることがあるよ、という制度です。

ここで、まぎらわしい使い方というのは、商品の品質誤認・サービスの質の誤認と出所の混同ということになります。

それでは、取り消されるってどういう手続きで取り消されるのかというと、そこが「審判」という制度に委ねられます。 審判という制度は、審判官という、審査官よりちょっと給料の良い人(多分、良いハズ)があたることになっており、登録商標やそれに似た商標が良くない使い方をされてるかどうか判断します。

この不正使用取消審判は「登録商標は決められた範囲でちゃんと使おうね」というルールに反するペナルティ的なものなので請求できる人が限られている無効審判と違って、誰でも請求することができます。

不正使用取消審判で争われた事例を見てみる

制度の概要がわかったところで、実際のケースで不正使用取消審判が争われた例を見ていきましょう。有名なファッションブランドであるヒューゴボスのBOSS部分に似せて登録商標を使っていた業者の登録商標が取り消された事件です。

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外国のブランドですが、日本でも安心してビジネスするためにヒューゴボスさんは、複数のブランドマークを日本で登録しています(下記はたくさんあるウチの一部)。どちらの登録も、25類の着る物、履くもの、付けるものをちゃんと指定している登録です。

一方、日本の業者さんが25類の商品ベルトなどを権利範囲として「BOSSANJERASU」というブランドを商標登録していました。

そのアパレル屋さん?が、下記のようなベルトを販売していたようです。

おしゃれな感じにしたくてBOSSを強調したんでしょうか?いや、でもコレ駄目でしょ。ということで、この商標の使用をみたヒューゴボスさんは不正使用取消審判(51条の取消審判)を請求します。

「BOSSANJERASU」の商標権者さんは、この請求に対してノーリプライでした。裁判所は、ヒューゴボスさんの商標が有名で、問題となった商標が登録商標に似ているもので、ヒューゴボスさんか、関係ある会社であるところからの物と出所の混同を生じるということでこの登録商標を取消す旨の判断をくだしました。

問題の業者さんは、別途「BOSSANJERASU」の18類のかばん類などの出願してて、その商標出願がヒューゴボスさんの商標との関係で問題があると連絡があった時に意見書で意見を言ってたみたいなんですよね。それで、ボスさんの登録商標を知りませんでしたとかも言えない状況でした(まぁ、商標の世界は知りませんも通用しないのですが)。

どうですか?
なんとなく、不正使用取消審判(51条の取消審判)のイメージがわいてきたでしょうか?

関連する商標法の条文は?

法律では、商標登録の取り消し審判として、不使用取消審判と不正使用取消審判ともう一つの取消審判の大きく3つの取消審判があります。不正使用の取消審判には51条の他にも52条の2・53条の取消審判があります。

関係条文は、下記の通りです(強調・下線は当サイトにて)。

第51条 商標権者が故意に指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用であつて商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。
2 商標権者であつた者は、前項の規定により商標登録を取り消すべき旨の審決が確定した日から五年を経過した後でなければ、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について、その登録商標又はこれに類似する商標についての商標登録を受けることができない。。

1項のところの前半パートは、どのような範囲が審判の対象となるかの部分について書いていて、専用権の範囲外の使用が該当してきます。商標権の効力は25条がメインなのですが、登録商標に似ている商標・指定商品(役務)に似ている商品・サービスは禁止権の範囲なので他の人は使えません。その範囲で商標権利者が使っていて問題になる使い方をしているとこの審判の適用されることになります。

細かく見ると、消滅するのは取消審判の審決が確定した後に問題となっている登録商標が消滅する(54条1項)とかあるんですが、ここでは深く見ません。

まとめ

登録商標は指定商品・指定役務の範囲では自分だけが独占して使うことが出来ます。法律は登録商標に似ている商標・指定商品役務に似ている商品役務での使用にたいして排除する効果を認めていますが、かといって商標権が商品の品質・役務の質の誤認、出所の混同などを防止するために不正使用取消審判のような制度を設けているのです。

以下、営業です。
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By |2023-06-02T12:12:00+09:007月 25th, 2019|